オスラー病のあなたのお子さんは大丈夫?


お子さんが同じオスラー病かどうか? 御両親が心配するは当然でしょう.

では、どのように調べたらいいのでしょうか? また、いつ、調べたらいいのでしょうか?


オスラー病の患者さんは、血管を作るのに必要なエンドグリンやアルク1というタンパク質の遺伝子の病的な変異があるので、このタンパク質が足りず、いろんな症状を出します.


まず、オスラー病であるあなたの遺伝子検査をします.90%近く、遺伝子の病的変異が検出されます.逆に10%の方は、オスラー病でも、今の遺伝子検査では、遺伝子変異を検出できません.この検査は、2020年4月から保険収載されており、保険がききますが、3割負担の方で、1万5千円ほどかかります.お子さんであれば、各自治体で医療費が負担されるところも多いと思います.また、どこの病院でもできるというわけではありませんが、HHT JAPANや患者会のホームページに、遺伝カウンセリング可能なところでは可能です.


遺伝子検査は僅かの採血だけで可能で、また技術的には生まれたばかりの赤ちゃんでも可能です.御両親でよく御相談されて、検査を受けてください.従って、検査の時期は、いつでも可能です.オスラー病の患者さんは、特に肺と脳に血管奇形の病変があると、いろんな症状を出す可能性が高く、これらの予防策を、前もって行うのに遺伝子検査の結果は、とても重要です.


遺伝子検査で、お子さんにあなたと同じ遺伝子変異がなければ、もうそのお子さんはオスラー病とは全く関係なくなります.そのお子さんに、将来、子供ができても、そのお子さん、つまりあなたのお孫さんがオスラー病になることはありません.


それでは、遺伝子変異が見つかればどうするのでしょうか?


上述のように、オスラー病の患者さんは、特に肺と脳に血管奇形の病変があると、いろんな症状を出す可能性が高いので、これらがあるかどうか検査を行います.


まず、肺に病変(血管奇形)がないかスクリーニングをします.子供さんで、放射線被曝が気になる場合は、胸壁からの造影心臓エコー(超音波検査)を行います.被曝もなく、安全な検査ですが、肺の血管奇形があるか、ないかしか分かりません.あるとなれば次に低線量の非造影の胸部CTで検査を行います.施設によっては、心臓エコーをせずに、CT検査から始める施設もあります.CT検査は、最近は短時間で、かつ低被曝できるため、子供さんを寝かす必要はないことが多いです.


脳に病変(血管奇形)があるかどうか調べるのは、国によって考え方が異なります.国によって違うというのは、見つかっても治療のリスクが無視できないので、検査をしても仕方がないと考える多くのヨーロッパの国々と我々や米国のように治療をしない場合でも、出血の危険性があることを知っていることは有用と考えます.子供の脳の検査は、非造影のMR検査を行います.この検査は、30分はかかるので、通常、鎮静が必要です.お子さんの昼寝の時間との兼ね合いを調整しながら、経口・座薬の眠り薬を使い検査を行います.ただ、年齢が4-8歳ぐらいのお子さんを沈静するのは難しく、沈静自身にもリスクを伴うことから、この時期はMR検査を避ける場合もあります.


以上の自分のお子さんがオスラー病か、気になる場合の参考になれば幸いです.



2021/2/5 記載, 2023/7/6 追記