鼻出血、何が一番効果的?



私は、耳鼻咽喉科医ではありません.脳血管内治療医です.なので、鼻出血の専門家ではないと思います.でも、少しだけオスラー病の鼻出血についてお話ししたいと思います.


今まで400人以上のオスラー病、それも診断基準で3ポイント以上、つまり確定診断の患者さんに会いました.その中には赤ちゃんもいるので、必ずしも鼻出血があるとは限りませんが、96%の患者さんに鼻出血がありました.一般的には、20歳までに70%以上の患者さんが鼻出血を経験すると言われています.


オスラー病の鼻出血は、自然出血、反復性と言われ、必ずしも重症の鼻出血とは限りません.毎日何回も出血する患者さんもいれば、月に一回ほどの人もいます.保育園のころに鼻出血は始まった患者さんもいれば、50歳を超えて始まった人もいます.閉経とともに鼻出血は殆どなくなった女性の患者さんもいました.つまり、患者さんによって、始まる年齢、その重症度、頻度はまちまちです.しかし皆さんが鼻出血でお悩みなのも事実です.


高齢のオスラー病患者さんで、70年以上、鼻出血に苦しみ、あらゆる治療を試された患者さんが10年ほど前に私の外来に来られました.彼は私に「今まで、たくさんのお医者さんに会ってきたけど、この病気のことを自分以上に知っているのは先生が初めてやな」と言われたのが印象的でした.内服薬、点鼻薬、電気凝固治療、皮膚粘膜置換術、など、あらゆる治療を試したようでした.彼は、「結局、なんもせんほうが一番良かったわ」と言っていたのも印象的でした.この例は、「何もしない方がいい」と言っているのではありません.


鼻出血に対する治療はたくさんあります.これが効いたと経験談を語る患者さんもたくさんおられ、個々の治療法を推薦したりや否定するつもりは全くありませんが、人よって効果的な治療法はいろいろあり、その効果もまちまちなのでしょう.いろんな治療法がある中で、「加湿・湿潤・鼻孔の入口への軟膏塗布」は、侵襲性も低く、安価で、かなり有効と私は思っています.効果がなくてもやめればいいですし、患者さんの身体的負担は殆どなく、一度は、騙されたと思ってやってみることを私はお勧めしています.


将来的には、鼻出血を含め、血管新生が起こっている皮膚・粘膜・肺・脳・肝臓などの病変部位に有効な内服薬が開発されることが期待されています.これらは全く、先の先の話ではないと思っています.


2023.6.30 記載